思葉は感謝と労いをこめて玖皎の腕をぽんと叩く。
低い声で玖皎はぶつぶつと呟き続けていたが、それを中断して主人に改めて視線を向けた。
「……なら次からは、そんなはしたない恰好で乗ってくれるなよ」
自分の服装を見る。
ジーンズのジャケットに春ニット、ショートパンツに厚手の黒ストッキング。
露出はむしろほとんどない方だ。
これのどこを見てはしたないと判断されたのか。
「別にはしたなくないでしょ、この服装。
こんなの今どき普通だよ」
「毎度毎度思うが、その袴の丈はいささか短かすぎるぞ。
だからあのような不埒な男が寄ってくるんだろうが。
すとっきんぐとやらで脚を隠していたってなあ」
「あーはいはい、話は家で聞くからとりあえず刀に戻って。
あと袴じゃなくてズボンね」
長くなりそうな説教を遮り、思葉は太刀を指差す。
こちら側まで人は来ないとはいえ、今の思葉は傍から見れば何もないところに向かって独り喋るへんてこな女子高生だ。
年齢が年齢だったら、職務質問を受けてもおかしくない。



