するとブレーキ音が耳に入り、走行速度が落ち始めていることに気付いた。
振り返ってみると、窓の外に目的の駅のホームが見えた。
(ナイスタイミング!)
ドアが開くや否や、思葉は急いで車両から降りた。
いくらか離れたとき、背負っている太刀がくいっと軽く引っ張られるような感覚が走る。
帰宅ラッシュの人ごみをかきわけてホームの端に逃げ、顔を上げると、そこにはぶすっとした顔つきの玖皎が立っていた。
人の姿になれても彼の本体は刀。
仮初の実体が刀から離れることはできず、思葉が移動したことにより、強制的に電車から降ろされたのである。
これはそれに対して不満を抱いている表情だった。
「思葉、なぜ邪魔をした」
「邪魔って、駅に着いたら降りるに決まってるでしょ。
それになぜって聞きたいのはこっちの方だよ、あんた何してんのよ。
あの人はあんたが観えない普通の人だったのに」
そう尋ねると、玖皎は眉間に皺を寄せてあからさまに不機嫌な表情になった。



