暮れなずむ空は、夜の気配とどこか悲しげな雰囲気を帯びている。


不安を掻き立てるような色合いだから、大きな災いが起こりやすくなると、昔の人々は思ったのだろう。


陽が落ち、まだ月が姿を見せないこの僅かな時間は、あらゆる境界が曖昧になりやすい。


坂道を駆け下りたところで、思葉は昨日と同じようにしゃがみこんでしまった。


アスファルトに降ろした鞄の縁を両手で持って、そこに額をこすりつける。



「ああ、もう、なんで引き受けちゃったかなあ、あたし……」



潔く腹をくくったにも関わらず、やはりと言うべきか早速後悔の念が押し寄せてきていた。


だって、あんなに困った顔をされたら断れるわけが無いと言い訳をすれば、お人好しすぎるともう一人の自分に笑われる。


そう、簡単に言ってしまえばお人好しなのだ。


だから今日のように、被る必要のない難に自主的に突っ込んでいく結果になるのである。


思葉は鞄にぐりぐりと額を押しつけて息の塊を吐いた。


手提げ部分を肩にかけ、膝についた砂粒を払い、灯りのつき始めた歩道を歩く。


後悔しても、もう引き受けてしまったのだ。


引き受けたからには、気乗りしなくても最後まで付き合うべきである。



(とは言っても、玖皎たちにはちゃんと話さなくちゃね……怒られそうだけど)



それでも彼らのことだから、小言を言いつつも思葉に協力してくれるだろう。


なんだかんだと口やかましく言っても結局、思葉のいい様に力を貸してくれるのが玖皎であり永近であるのだ。