「わたしは行かなかったわ、熱を出してしまったのよ。


まあ、たとえ体調が良かったとしても行かなかったでしょうね。


わたしがオカルト研究部に所属しているのはスピリチュアルに興味があるからで、降霊術は否定しないけれど試したいと思うほどではないの」



どちらも変わらないのでは、と思葉は内心首を傾げる。


だが論点はそこではないので口には出さなかった。



「参加したのは唐津先輩を含めて4人。


学校に忍び込んで、唐津先輩の開発した降霊術を行ったそうなんだけど……」



いくらかためらってから、松山は思葉の目をじっと見つめて言った。



「それ以降、儀式に参加した全員の様子がおかしくなったのよ」


「もしかして、矢田さんも参加してたの?」



急にクラスメイトのことを思い出して言ってみると、松山は頷いて続けた。



「1人は活発な人だったのに塞ぎこんでしまって、まだ一日も登校していないの。


もう1人も、学校に来てはいるけど誰とも口をきかないでいる状態。


矢田さんは男子への苦手意識が過剰になって接触をひどく拒んでいるし、唐津先輩はなんだか取り憑かれたみたいにより強力な降霊術を編みだそうとしているし……。


何より全員、いつでも鏡を持っているのよ」


「鏡?」


「そう、身だしなみをチェックするわけでもなく、ただ持ってじっと見つめていることが多いわね」



松山の言葉を繰り返して、思葉はホームルームの最中にもかかわらず鏡を見ていた矢田を思い出した。


思い返してみると、確かに彼女はヘアスタイルやメイクのチェックをしている様子ではなかった。



「……唐津先輩はね」