するとそこには何故か來世が座っていて、実央と一緒に楽しそうに笑っていた。


実央はともかく、來世のは同学年相手に口下手と人見知りを発動させた幼馴染を面白がっている顔だ。


思葉はむっとして來世の頭をはたく。



「いてっ」



なぜこの幼馴染みはいちいち大げさな反応ばかりするのだろうか。



「邪魔、どいて。そこあたしの席だから」


「へいへい」



思葉に椅子を返しても、來世はすぐには離れず隣の席の空いている椅子に腰かけた。


ニヤニヤ笑いながらずいとこちらへ身を乗り出してくる。


似たような笑みを浮かべた実央が來世よりも先に口を開いた。



「ねえ、松山さん、思葉ちゃんに何の用事だったの?」


「さ、さぁ……放課後にまた話すって約束されただけで、まだ用件については何も言われていないよ」


「なんだぁ、つまんねぇの。


学年の5本指に入る美女が地味代表のおまえに話しかけるなんて、武川にカレシができる並に珍しいことじゃん。


青原の奴、本当に武川でいいのかねぇ?」



ほとんど同時に思葉が來世の右脛を、実央が左脛を蹴った。



「なによその例え、カレシができて悪かったわね。


自分にいつまで経ってもカノジョできないからって、その例えはないでしょ、ばか辻森」


「地味代表ってなによ地味代表って。


チャラチャラしてるあんたよりはずうっとマシよ」



來世が顔を歪めて呻く、上履きの先は硬いので蹴られるとけっこう痛いのだ。


それでも思葉は手加減したが、ここのところすっかり恋愛モードに入っている実央は容赦しなかったらしい。