「思葉、今日の茶はどうだった?」
「え?えっと、おいしかったよ。
あ、でもちょっと甘かったような気がする……」
「ふうん、そういうことか」
蓋を開けて匂いをかいだ玖皎が、やや顔をしかめて納得した。
永近がしてやったり顔をますます深める。
置いてけぼり状態の思葉は、腰を浮かせて永近に尋ねた。
「ちょっと待ってよ、2人だけで納得しないで。
おじいちゃん、お茶に何を仕込んだの?」
「思葉、これは甘茶(あまちゃ)だ」
「甘茶?」
「そうだ、読んで字のごとく、苦味のない甘い茶……なのだな?」
玖皎がちら、と見上げると永近は首肯した。
受け取った水筒の蓋を開け、思葉も匂いをかいでみる。
お弁当を食べていたときは気づかなかったが、普段よく飲む烏龍茶や麦茶にはない甘い香りが鼻腔をくすぐってくる。
改めて舌に神経を集中させて一口含んでみると、確かに甘い。
「おまえ、飲んでいたのに気付かなかったのか?」
「へ、変な味しなかったらあんまり気にしないから……」
「自分の身体に取り込む物に対して無防備すぎではないか、それは。
おまえはもう少し、自分に直接関わってくるものへ神経を尖らせた方がいいぞ」
「う……それで、この甘茶がどうかしたの?」
大げさに呆れる玖皎から目を逸らし、思葉は話の軌道を戻す。
永近は手の中にある匂い袋をいじった。



