雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕






思葉は左手を見せながら、放課後のことと帰って来てからのことを説明した。


傷は玖皎が何とかしてくれたと大雑把に話し、細かいところは伝えない。


そのとき、玖皎が永近に分からないよう忍び笑いを漏らしていたのを思葉は見逃さなかった。



(いやいや、あんた笑ってるけど、話したらおじいちゃんにぶっ飛ばされるかもしれないわよ……? )



癪に障るので話してやろうかと一瞬迷ったが、赤面する羽目になるのは自分の方だと分かっているので言わないでおく。


説明を聞き終えると、永近が手首につけていた数珠を持ち、思葉の左手を何度もさすった。


何ともいえない表情で首を傾げる。



「む……何か残っていないかと思ったが、きれいに祓ってくれたようだな」


「おれがそのようなへまをするわけがなかろう、永近よ。


手掛かりになるものが残っていれば、思葉はもう咒の主の手に墜ちている」


「ああ、そうであったな、これは失礼した」



腕組みをして得意気に鼻を鳴らす玖皎に、永近がやんわりと謝る。


それから立ち上がり、机に転がしてある匂い袋を手にした。



「ここに来るまで傷が暴れなかったのは、これが抑えつけてくれていたからかのう。


ほとんど気が削げておる、また新しく作っておいてやるぞ」


「あ、ありがとう」