呆れた玖皎が大きくため息をつき、腕組みをして、ふと何か思い当たった顔をする。
「うん?待てよ、それならなぜあんなに痛みが起こるようなことに」
――コンコン
唐突なノックに玖皎が口を閉じる。
声を聞く前から、ドアの外に誰がいるかは分かった。
「思葉、開けるぞ」
「うん」
思葉は返事をしながら、両足をベッドの端から床に落とす。
ドアが開き、思った通り永近が入ってきた。
「お帰り、帰っておったんだな」
「ただいま。さっきね」
永近は床に倒したままの全身鏡を見て一瞬顔をしかめたが、すぐに真面目な表情になって大股でベッドに近づく。
それから、アイスティー色の目でじっと孫娘を見つめた。
思葉はつい顎を引く。
たとえ身内でも、親しい相手でも、見つめられるのは苦手である。
「ど、どうしたの?」
「いやな。帰ってきたら、結界の中に何かが入り込んだような気配がしたんじゃ。
その跡を辿ったらおまえの部屋に繋がっていたんだが……何か連れ込んでしまったのか?」
全身を観察していた永近の視線が、途中から思葉の左手に止まっていた。
さすがは阿毘にも一目置かれる祖父だ、言わなくても気配を感じるだけで大方見当が付いたらしい。



