そして、思葉はその感情に素直に従い行動した。
「ばかぁーーーーっ!!!」
「ぐおっ!?」
振り回した右手が命中し、玖皎が痛そうな声をあげてのけぞる。
その隙に思葉は玖皎の腕からすり抜けベッドの上に逃げた。
左手を再度胸に寄せ、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「痴漢、変態、どスケベ!女の子に何てことすんのよ!!
青少年ナントカ罪で訴えられても文句言えないわよ!」
「な、なんだこの仕打ちは!
思葉、これがおまえの助けてもらった相手への礼の仕方か!
一体永近に何を教わってきたんだ!」
玖皎が顎を押さえながら思葉を睨みつける。
当然だ、彼にしてみれば助けたのにお礼を言われるどころか殴られたのである。
もちろんそのことに対する感謝の気持ちは思葉にもあったが、それとこれとは別問題だ。
「やっ、やり方ってもんがあるでしょ!
なんでわざわざこんな手段を選んだのよ、意味分かんない!」
「おまえなあ、その傷はただの傷ではなかったんだぞ。
それは妖が気に入った相手を支配するために負わせる傷、自分の妖力を体内に仕込み肉体や精神をのっとる咒(まじない)をかける媒体となるものだ。
もたもたしていたらおまえの自我を奪われていたかもしれなかったんだ、手段なぞ選んでいられるわけがなかろう。
破る術も確かにあるが、あれは時間もかかるし余計な力も要る、喰ってしまった方が手取り早い。
最も速くておまえの負担の少ない手法を取ってやったんだぞ、ありがたく思え」



