思葉は握りこんだ右手を口元にあててかたく目を閉じ、玖皎から顔を背ける。
今の玖皎の行為は、傷口に入り込んだ毒を吸い出すのと同じものだ。
実際、好き放題に思葉の左腕の中で暴れ回っていた激痛は徐々に収まり消えつつある。
そうだと分かっているのに、何故だかとてつもない恥ずかしさと罪悪感のようなものが込みあげてきて、とても直視していられなくなっていた。
すぐに左手を引っ込めたくなる衝動をどうにか押さえこみ、歯を食いしばってひたすら耐える。
やがて散々苦しめられた痛みはなくなり、代わりに傷口から玖皎の呼気に乗って吹き込まれた何かが内側から腕を温かく包み込んでくる感覚がした。
それは以前、肉体を操るために柄を握った手を介して流し込まれた玖皎の波動によく似ていた。
玖皎がようやく口を離し、親指の腹で思葉の手のひらを一撫でする。
「これで断ち切れたはずだが……思葉、大丈夫か?」
ずいと玖皎が思葉の方へ顔を寄せる。
尋ねられた思葉は反射的に目を開け、かなり近くにある玖皎の顔を見た。
眉目秀麗、端正、精悍、容姿端麗、あらゆる褒め言葉が似合うような、でもどの言葉で表現してもおこがましいと思わせるほど美しい顔がある。
宝石と見紛う綺麗な黒い瞳は、純粋に思葉の身を案じていた。
「腕はどうだ、まだどこか痛むか?
ここ以外に痛むところはないか、平気か?」
答えようと息を吸ったとき、さっき目を閉じるまで見ていた光景を思い出す。
途端、また身体が恥ずかしさで熱くなった。
顔から火が出るというのはこういうことだろうか、熱だけでなく逃げ出したい気持ちも突沸する。



