雲外に沈む 妖刀奇譚 第弐幕






そうこうしている間も思葉は激しく痛がり、錯乱に近い状態で泣いているせいで過呼吸を起こし始めている。


玖皎は厳しい顔で、思葉の額のあたりに頬を寄せた。


それから肩を支えている手で、赤子をあやすように左の二の腕をさすってやる。



「思葉、おれの呼吸に合わせろ。それから腕の力を抜くんだ、それでは余計に痛む」


「い、っつ、うぁ、あ、あ、あ」


「ほら、吸って、吐いて、吸って、吐いて……ゆっくりで大丈夫だからな」



傾いだ頭がもたれている胸板の動きに合わせ、思葉は歯を食いしばりながら必死に呼吸を合わせていく。


冷静さを失った彼女は、玖皎の言葉に従い、それに縋りつくしかなかった。


玖皎もそれはよく心得ており、彼女を安心させるように穏やかな声で言葉をかける。



「そうだ、慌てずにな。吸って、吐いて、あぁ上手だ、よくできているぞ」



何度かゆっくりと吸って吐いてと繰り返していくうちに、思葉は次第に落ち着き普段の呼吸を取り戻していく。


肩の強張りも徐々に緩まり、玖皎は手を思葉の首に差し入れ、自分と目を合わさせた。



「思葉、おれが分かるな?」


「あ、く、くしろ……」


「そうだ、大丈夫だからな。


左手が痛むんだな?腕ではなくて、手だな」



思葉はこくりと頷く。


左手にはまだりんりんとした痛みが残っていた。


身体が慣れつつあるのか、それとも玖皎の言う通り余計な力を緩めたからか、感じ方は先ほどより少し和らいだけれど現状に変わりない。