そうこうしている間も思葉は激しく痛がり、錯乱に近い状態で泣いているせいで過呼吸を起こし始めている。
玖皎は厳しい顔で、思葉の額のあたりに頬を寄せた。
それから肩を支えている手で、赤子をあやすように左の二の腕をさすってやる。
「思葉、おれの呼吸に合わせろ。それから腕の力を抜くんだ、それでは余計に痛む」
「い、っつ、うぁ、あ、あ、あ」
「ほら、吸って、吐いて、吸って、吐いて……ゆっくりで大丈夫だからな」
傾いだ頭がもたれている胸板の動きに合わせ、思葉は歯を食いしばりながら必死に呼吸を合わせていく。
冷静さを失った彼女は、玖皎の言葉に従い、それに縋りつくしかなかった。
玖皎もそれはよく心得ており、彼女を安心させるように穏やかな声で言葉をかける。
「そうだ、慌てずにな。吸って、吐いて、あぁ上手だ、よくできているぞ」
何度かゆっくりと吸って吐いてと繰り返していくうちに、思葉は次第に落ち着き普段の呼吸を取り戻していく。
肩の強張りも徐々に緩まり、玖皎は手を思葉の首に差し入れ、自分と目を合わさせた。
「思葉、おれが分かるな?」
「あ、く、くしろ……」
「そうだ、大丈夫だからな。
左手が痛むんだな?腕ではなくて、手だな」
思葉はこくりと頷く。
左手にはまだりんりんとした痛みが残っていた。
身体が慣れつつあるのか、それとも玖皎の言う通り余計な力を緩めたからか、感じ方は先ほどより少し和らいだけれど現状に変わりない。



