「大変な事って?知らない何それ?」


「どうやらうちの会社、吸収合併されるんじゃないかって。」


「ちょ、ちょっとどういう事?」


「声が大きいって。」


「ご、ごめん…でも、吸収って事はうちの会社無くなるってこと?」


「うーん、普通だとそうだろ。俺もたまたまトイレで聞いただけだしさ。本当かどうかもまだ分からないけど。」


「はっ?トイレ?」


「ああ、役員フロアのトイレあまり人が行かねぇから俺、たまにあそこ使うんだ。それで個室に入ってゆっくりと用を足してたら恐らく幹部だと思うんだけどそんな話をしてたんだ。」


て言うか、個室とか用を足してたとか細かい情報いらないんだけど……


「それで?」


「うーん、M&Aがどうのこうのって聞こえた。相当やり手の企業だとか。どちらにしてもあまり、いい話ではなかったな。」


「そっか……。私達ってどうなるのかな?」


「ケースバイケースだけど……保証は無いよな。はぁ……転職先今から探すかなぁ。」


「そんな、まだ分かんないじゃない。」


「それがその時、もう一つ良くない話を聞いたんだ。」


「なに?」


「どうやら、うちの会社の中に情報を流してるやつがいるんじゃないかって。」


「スパイってこと?」


「だよなぁ……。もし本当だとしたら、俺そんな卑怯なやつ、絶対に許せねぇよ。」


確かに、許せない。


正義感の強い志賀じゃなくても、誰でも思うよ。


同じ社内にそんな人がいるなんて……一体誰?