これまで離れて過ごしていた期間を思えば、いつまででも二人で抱き合う時間が足りなかった。
だけど今は仕事があるから、ずっとそうしてるわけにもいかなくて。
名残惜しく離した身体。
離れたあとで、お互いにさみしくなって、困った笑顔で微笑みあう。
ずっと離れていた分の想いが、離れていた間のお互いの存在が、どうしようもなく足りない。
泣いて赤くなった愛実の瞳をじっと見つめれば、そのまぶたがゆっくりと閉じられた。
その瞳が閉じたときには、俺はすでに自分の顔を傾けながら彼女に近づいていて…。
「…っ…!」
刹那、迷いが生じて、本来この時間は仕事中であるという背徳感が背筋を這い、やりきれない俺の唇は愛実の鼻のてっぺんに着地した。
驚いたように目を開けた愛実の顔は…なんだか不服そう。
「仕事、戻らなきゃ。」
昼休み終わりに突撃して来たやつが、何を言うのかという目で見つめられても…もう、さっきまでも俺たちとは違うだろう?
これから、二人の時間をたくさん重ねていくんだ。
あとで、ゆっくり、二人だけの時間を過ごせばいい。
「終業後、飯食いに行こう。つぐ、中華好きだったよね。」
前に友達に連れて行ってもらった中華料理店で、食べた麻婆豆腐が愛実の好きそうな味付けだったことを思い出して、今日の夜はそこに行こうかなんて頭で考えていたら…
背伸びをした愛実に頭の後ろに腕をまわされ、キスされた。
目を見開いたままの俺の瞳を捉えて、「意気地なし」と不貞腐れ気味に言う。
…全くもって、その通り。
でもなんだかバカにされたようで悔しくなって、不敵に笑ってから、「今夜、覚えとけよ」と物騒なことを言ってみる。
そんなつもりは、微塵もないのだけれど。
一応、見栄だ。虚勢を張っておかなければ、俺の立場がないからな。

