片道切符。



『帰って来い』という言葉が、思いがけず、俺の心のどこかにある空いたスペースに、すとんっと収まるような感覚がした。

愛実も愛実で、なぜか、感極まって、また涙を流している。

…そうか、数年越しに言えたこの言葉。

俺はあの日、駅のホームで、こう言ってやれればよかったんだ。

待ってるから…って。

俺の元へ、帰って来い…って。

年月を経てようやく伝えたこの言葉は、ずんと重みが増していた。

あの頃とはまた違った意味まで、含まれてくるだろう。

「…今よりも、もう少し大きなところ借りられるように、頑張るから。」

「え?」

素っ頓狂な声をあげて俺を見る愛実に、照れ笑いを浮かべながら言う。

「部屋。二人暮らしするには、あそこは狭いだろ?」

断られてしまったらとても恥ずかしい申し出をしているのに、愛実はきょとんとした顔のまま数秒、俺を見つめている。

瞬きを数回して、ようやく意味がわかったのか、満開の笑み浮かべて、「うん…!」と元気よく返事を返してくれた。

「頑張れる。どんなことでも、真宙がいてくれるなら。」

俺の手を握ったまま、自分の頬に寄せて、愛実は柔和な笑顔を見せる。

この笑顔を、俺はこれからの俺の人生のすべてをかけて、守りたいと強く思った。