会社が大きいため、多くのクライアントがいるそうだ。


よくお偉いさんが監督を務める映画に、使われているみたい。


私が知っている情報はこれくらい。


なにしろ何も教えてくれないから。


会社に入ると、独特な雰囲気を味わう。



「あれ、あの子...。

社長の娘さんじゃない?」


「え、本当?」


そんなひそひそ話が私の耳に入る。


ここの社員がしていることだ。


もう慣れた。


陰でこういうこと言う人は、大抵父さんの事をいいように思っていないのだ。


だから私まで火の粉が飛ぶ。


そんなことを気にせず、エレベーターに乗り、父さんの部屋のある階まで行く。



「あら、來奈ちゃん?

久しぶりねー!

大きくなって、ますます大人っぽくなったわね」