【短編】フィガロの葉桜

「そして、お前は喰らったんだ。


自分の兄弟の血肉をね」


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


それは獣のほうこうにも似た叫びだった。


それに驚いた鳥達が一斉に飛び立ち、ギャアギャアと喚きを散らす。


「恥じる事じゃないよネロ。


お前は生きる為、兄弟を喰らった。


私だって同じさ。


生きる為に兄さんを……喰らった」


フィガロは不意に悲しそうな顔になり、葉桜の方を見た。


「私達兄妹は『呪われてる』だか、なんだかでこのアランクディに捨てられた。


まぁ、今ともなれば兄の肉を喰らった魔女とも言えば、確かに呪われてる気はするけどね」


フィガロは自嘲気味に笑う。


「私が、お前の事を一番よくわかってる。


自分を捨てた親。
迫害をする他人。
助けてくれない社会。
不条理な世の中。


全てに対する怨(えん)さ。


私はあえてお前の過去には触れない。


語らなくていい。


仇でもなんでも討てばいい。


その先に果てない怨恨の渦が出来ようとも、それで自分が満足するなら好きなようにしろ」