師央には、バイクに乗せる前に軽く話した。 今日がオレたちの両親の月命日だ、と。 親父のバイクを飛ばして墓参りに行く。それだけだ。 極端なマフラー音を轟かせるわけじゃない。 窮屈なくらいまともなスピードで走る。 本当は、風になってみたい。轟音をあげて吹き去る風に。 ほとんど開くことができないアクセルを、思うまま、全開に回してみたい。 重いフルカウルのボディが弾むほど強く、風圧に打ち勝って、重力から解き放たれて、スピードを支配したい。 オレは、もっと走りたい。