赤いエスプレッソをのせて

先生の体は女の私でも誘惑されてしまいそうなくらい起伏に富んだボディで、一瞬、なるほど母性的な体だ、なんて感想を抱いてしまった。

「大丈夫ですか?」

と訊ねられて――今までべそ掻いてしがみついてたのを思い出し――恥ずかしさと申し訳なさとがごっちゃになって胸の奥から競り上がってくるのを感じ、

「だだっ、大丈夫でりゅ!」

声が、上擦った。

ポカをした自分に気付いて、あ、と声を出す前にさらに収縮してしまう背骨を、また感じる。

ふふっ、とそんな私を見て仲代先生が笑った。

「ほんとに、大丈夫ですか黒井さん。バタバタですよ?」

「だ、だい、大丈夫ですっ」

バレバレの見栄を張り、

「そそそれよりも、仲代先生って意外と、演技派ですね……。あのぉ、母さんの真似、っすか? さっきの」

と逆に指摘する。

そうやって自分から矛先をそらさないと、顔から火が出そうだった。