赤いエスプレッソをのせて

「とぉっ――っちゃ、くっ」

自動ドアの少し前で、まるで42・195キロ走り終わった化のようにガッツポーズをあげて止まった時、

「え?」

「ん? ――おやっ、美代さんじゃないですか! いやぁ、こんなところでお逢いするなんて、奇遇ですね?」

「っっ――――!?」

一瞬一気に、達成した! って感じの、るんるん気分を害された。

がくっ、と、お年玉ならぬ『落とし玉』が頭へ落っこちてきたかのように。

なにせ突然、真っ赤な頭がどうあっても目を引く変人・山久尚司と鉢合わせてしまったのだから。

「なんでっ、アンタこんなとこにいんですか!?」

叫んだ私に、彼ははじめて逢った時とまったく同じ、飄々とした声と顔で、

「なんでって言われましても……こないだ精神科に行けって言ったのは、アナタだったはずですけど?」

……ごもっともです。