赤いエスプレッソをのせて





えっへん、とわざとらしく咳払いしよう。

自慢だが、私はこれでも中学時代陸上部だった。

長距離走だったら、その辺のなまっちょろい女子高生とかには全然負けたりしない。

だから私は、スカートを一着も持ってなかったりする。

だって、走るのには面倒だし、パンツやジーンズのほうが動きやすいのよね。

ただ唯一、走る上での難点が、髪だ。

「あーもう、くそっ」

私の髪は、前に抜けてしまってを計ってみたら、なんとまあ六十センチを越えていた。

前髪も実際のところ結構長くて、普段は片側に寄せているからいいとしても、走っているとだんだん乱れて口の中に入ってきたり、汗ばんで頬にくっついたりと大変なのだ。

ベッタベタな化粧はしないからいいにしても、髪の毛がくっつくのばかりはどうしようもない。

「私は好きで髪伸ばしてんじゃないからね、わかってんでしょうね、千代!!」

肩の上、まったく動じない千代へ、少しぐらい揺れてしまえと思う。