赤いエスプレッソをのせて

ベッドの上でどことなくぎこちない笑みを浮かべている、私。

スケッチブックで見せてもらった構図のままだったその絵は、たった一色だけしか塗られていなかった。

『私』は一切塗られていなくて、その向こう、窓の外の空が、オレンジたった一色で。

「…………なに、これ?」

一度振り返って、いろんな意味を込めて訊ねたけど、彼は静かだった。

無視はされていないようだ。だってこっちをまだ、まっすぐ見てるし。

絵へ目を戻すと、右下に小さく、彼のサインと一緒に短い言葉が添えられていた。

題名だろうか、そこには『自分を表現するのが下手なアナタへ』とあった。

――自分を表現するのが下手なって……悪かったわね――

思った時、ふと、いつだったか彼の言葉が、リピートされた。

「いつか、〝アナタ色〟に染まった空を描いてみたい」

〝アナタ色〟――〝私の色〟――〝この色〟――〝オレンジ〟

「は、は……バカね……アンタって……」

途切れ途切れに笑いが漏れて、その一音一音と一緒に、イーゼルの前でペタンと座り込んでしまった。

いや、座ったというよりも、崩れてしまった。