赤いエスプレッソをのせて

たまらなくなって、キスをした。

彼の唇はいつかの時よりも、冷たかった。

温度じゃない。

私への態度が、冷たかった。

彼との付き合いの中で学んだ通りに、強引に口をこじ開けてみる。

こじ開けてから、彼がまったく動いていないということに、手遅れになってから気付いた。気付き直した。

唇を離すと、虚ろな瞳の彼は、小さくポカンと口を開けていた。

「驚、か、ないの……?」

訊ねてみても、返答は沈黙。

がり、と胸の内側を先の尖った鉤爪でめちゃくちゃに引っ掻かれた気がした。

「……この、クソ野郎……」

言って、私は彼をど突いた。ど突いて、突き放して、立ち上がる。

「なによ。どうして、アンタ死んでんの? 絵は?」

私、絶対って言ったじゃないの。アンタ、約束破るの?

と、部屋の奥、まるで血で汚れないように、彼からだいぶ離れたところ、布のかけられたイーゼルがあった。

「……」

黙って近寄り、強引に布を取り払うと――そこには、私がいた。