赤いエスプレッソをのせて

ただ、たとえ天気が悪くても、胸の奥のほうは、まるで祭囃子に誘われるように跳ね回っていた。

一週間ぶりに、ショーに逢えるんだ。

彼は本当に絵に専念していたらしく、自分の家で絵を完成させると言ってから今日まで、たった一度も顔を見せてくれなかった。

それだけ、絵のほうに専心しているってことだけど、ちょっとくらい逢いにきてくれてもよかったと思う。

今まで逢えなかった分に焦らされてしまった感情が私の中でひゃっほーい、と雄叫びをあげ、ポップコーンのように踊り騒ぐ。

信号と曲がり角をあと三つずつ過ぎれば、彼のマンションはすぐだ。

そう思うともう一度、ひゃっほーい。

そうだ、この際だから出逢い頭に抱きついてやろうか。

ショーのことだ、そしたら度肝抜かしてすっ転ぶに決まってる。

もし効果が薄かったなら、キスをしてやってもいい。

そして言ってやるんだ。

どうだ、さみしかったでしょう。


人混みに紛れて信号を渡った。

人込みに流されて角を曲がった。

あと二つずつ。