赤いエスプレッソをのせて

まるで、麻薬中毒になってしまっているようだった。

山久尚司という、自分じゃない自分を演じる自分を保つために必要な『薬』がないと、寒くなってしまう。

肌にも感じて、心にも感じて、そして、震えてしまう。

この感覚をなんて言うんだ?

さみしいなんて言葉じゃ表現しきれない。なんて言うんだろう。

窓の外の青空にはいつのまにか、ちらほらと小さな入道雲が浮いていた。

きっとあれも、いつかの入道雲と同じように、大きくなっていくんだろう。

だけど私は、今浮いている入道雲を見て、なんとはなしに思う。

(あれは膨らんじゃいけない雲だ)

ふと、雲の白さにはっとして肩を見れば、千代は、相変わらずそこにいた。

溜め息が漏れるのが、止められない。

いつまでも私なんかの肩にいるなんて、ほんと物好きとしか言い様がないわ、この妹。