赤いエスプレッソをのせて

その膨らむ気持ちを、この際だから楽しむことにした。

「それじゃあ、一週間したら絶対に見せてよね。完成しなかったなんて言い訳、聞いてやんないわよ?」

「OK。一週間っていったら、美代ももう退院してるだろうし……僕の家は知ってるよね、そっちに病院からの帰り来てよ。待ってるからさ」

「了解。くどいようだけどぉ、絶・対・よ?」

「はい、はい、かしこまりました」

彼は何度もうなずいて、病室の白い引き戸式のドアをスライドさせた。

彼の体が、壁の向こうへ滑る。

そして、ゴロロロ・パタン――と閉まったドアの向こう、曇りガラス越しに見えていた赤い頭が、スッと離れていく。

ちくり、となにかが私を刺した。

「――……」

なんだろう、さようならというわけでもないのに、途端、あまりにも寒くなって仕方なかった。

冷房が効きすぎてるのかしら、ここ。

クーラーのリモコンを見れば、室内温度は24度に設定してある。

……暑くも寒くもないはずなのに、なんで私、震えてるの?