赤いエスプレッソをのせて

「彼らは近所に住んでた夫婦だったんだ。だから僕のことを知ってた。

――それで、ささくれていた僕を見かねて養子に入れてくれたんだよ。それから彼らが、僕にいろいろなことを教えてくれた。他人と接する方法や、失礼のない態度の取り方。今の僕は、彼らがいなかったらなかったんだよ」

そんなところへ、ひょっこり現れたのが、私だった。

効果不幸か、奇しくも亡くなってしまった当時のお姉さんにそっくりな、私が。

だから彼は、私のことを見て一番に言ったんだ。

殺してほしいって。

それはあの一瞬で、どうして自分が生き延びたんだろうという強い疑念が彼を襲ったから……

だから、だから彼は、そう言った――。

「思ったね、あの時は。世界で一番親切なのは人間だって。そして世界で一番意地悪なのも、人間なんだって――」

急に彼の声のトーンが落ち込んだのを感じ、なにかあったの? と優しく先を促した。

コーヒー豆でも噛み潰したように苦い顔になった彼は、絞り出すように言う。