赤いエスプレッソをのせて

「だから結構、荒れたんだ。周りのことなんか全然気にならなかったし、頼れる人も止めてくれる人もいなかった。

だから僕は、自分がしたいことを、悪くもよくも全部やった。とにかく、どうにかしてしまいたくて仕方なかったんだよ」

そんな彼が、どうして今みたいな状態に陥ってしまったのか、聞けばだれもが納得するなんて、思わない。

でも、愛情を注いでくれる男のそういう諸々の事情を、少なくとも相手である私が理解しなければと思った。

だから、理解した。したつもりだ。

「そんな時ね、ようやく、ひとりのおじいさんが僕を止めてくれたんだ。その時僕の目を覚まさせてくれた言葉は、今でも暗唱できる。『自分が思うことをするなとは言わない。ただし、自分がやったことはほかの誰でもなく自分へ返ってくるんだよ』ってね。

――その人が、僕を育ててくれたんだ。ハタチの歳までね」