赤いエスプレッソをのせて

キスをしてほんの数秒で、山久は目を覚ました。

朝日が目の前にあるかのように数回しばたいて、彼は開口一番、

「姉さん?」

と言ったのだ。

当然、わけがわからなかった。

寝ぼけてるのかと思った私が、いつものように、なにふざけたこと抜かしてんのよ、と跳ね除ける前に、

「姉さん……よかった……! ――ぃ、生きてたんだね……っ?」

彼は私を、どこにそんな力があるのか不思議なほど強い力で、突然抱きすくめたのだ。

驚いて、突き飛ばすこともできなかった。

できなかったうちに、私の胸が濡れた――

しっとりと、あたたかなもので。

それは、彼の涙だった。

抱きつかれたことも、したたってきた涙も、なにもかもが突然過ぎて呆気に取られてしまっていると、彼は掠れ掠れに言った。

「さみしかったよ……僕は、あの日からずっとひとりだったんだ……。ずっと、ずっとひとりで……僕は――」