「李穂(りほ)、新入生部活説明会のことなんだけど……」

「待て、大成(たいせい)。
ドリンク作ったらすぐ行く」

「じゃあ、あと10秒な」

「ふざけんな」



仕事を済ませて、体育館の端を素早く通り抜けた。

3年目ともなれば、これくらいの仕事は手慣れたもんだからな。



柔らかな、春。

新入部員を増やしたい、あたしたちバスケ部。



大成はキャプテン、あたしはマネージャー。

あたしたちはそれなりな日々を過ごしていた。



「遅い」

「うるせ」



そう、それなりに揉めながら。



「グーかチョキかパーか、好きなの選べ」

「じゃんけん?」

「腹パンか目潰しかビンタだ」

「こわ」



バチバチ、と火花が散る。

周りがまたやってる……と呆れた瞳をしていることに気づいていても、これは変えられない。



────好きだから、素直になれない。