むっとして頭をはたく。

いてっと佐野が頭をさする。



「とりあえず下の名前で呼び合うか」

「ななななんでだよ」

「お前以外、みんなそうしてるから」



そう、か。

これ以上、浮いてるのは嫌だしな。



仕方がない。

……うん、仕方がないもんな。



「大成」

「なに、李穂」



────好きになっちまった。

なんて言ったら、お前はどんな反応をするんだろう。



……あ、無理だこれはない。

あたし超きもいわ無理無理無理。



ぶんぶんっと顔を振る。

大成は不思議そうな表情だ。



ええい、今のあたしに「なにしてんの」とか訊くな!

あたしにもわかんねぇんだよ!



「改めてよろしく」



そう言った大成が珍しく笑顔を浮かべていて。



思わず恥ずかしさから顔面を叩いてしまう。



「おま、なにすんだよ」

「むかつく」

「は?」

「顔面が鬱陶しい」

「傷つくわ」



それから、険悪なやりとりが定番になった。

それはどうにかなんないだろうか。



とりあえず、あたしはあの頃から死ぬほどばかだった。

誰かこの時のあたしを殴ってくれ。