必死に下を向く紗月ちゃんの顎を、クイっと上に向かせた。 「はな、して…結城、くん」 「っ…」 真っ赤な顔に、潤んだ瞳、上目遣い。 わざとやってる? 「違う、晴」 「は…っ、る」 ねえ、今、ドキドキしてるでしょ。 俺ほどじゃ、ないかもしれないけど。 「…ちゃんと目見て言って」 「…は、るっ」 小さすぎる声で、泣きそうな目で。 ドキドキしてるのが伝わってくるくらいに。 もう、俺の理性なんかどこかに飛んで。 唇が触れる、あと数ミリくらいで 「え、っ」 その声で、ハッとした。