相手が紗月ちゃんじゃなければ、きっともっと余裕があって。 浴衣可愛いね、って言えたんだろう。 だけど紗月ちゃん相手だとどうしたって、言いたいことも言えなくなってしまう。 すれ違う男がチラチラと紗月ちゃんを見ていることが、 それに全く気付かずに無防備に可愛い笑顔を見せる紗月ちゃんが、 俺の余裕をどんどん奪っていくから。 紗月ちゃんの言葉にも、素っ気ない返事しかできなくて。 そうだね、なんて淡白な返事をしてしまってから、もっといい返事を思い付いてしまう。