裕一郎の部屋から筒抜けの友達の声に、デスクに座っていた河村は微笑ましくてそっと口端をあげて笑う。
と、窓からヒラヒラと蝶が舞い込んできた。
「おっ、ようやく探索から帰ってきたか」
裕一郎が放ち、行方不明になっていた式蝶が宙に伸ばした河村の指先に止まる。
霊道に迷い込み出られなくなっていたが、道が正されてようやく戻ってくる事が出来たのだろう。
「お疲れさん」
声をかけると、式は銀色の広げていた羽を静かに閉じる。
「お前の主は今忙しいみたいだから、久しぶりに俺とのんびりするか?」
風に舞う桜の花びらを窓から眺めながら、吸いかけのタバコを灰皿でもみ消すと、河村はイスの背に深く凭れ目を瞑った。
― 完 ―
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