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「如月、如月ーっ」

教室に入ると、裕一郎の姿を見た吉山啓太(けいた)が駆け寄ってきた。


「おはよ。どうしたんだよ、そんなに慌てて」


「ちょっと、こっちいいか?」


言いながら、返事も聞かずに啓太はグイグイと裕一郎の腕を掴んで、教室の隅へと引っ張っていく。

そしてそのまま壁際に追い詰められ、ただならぬ形相のクラスメートに裕一郎はたじろいだ。


「な…何…啓太?」


「しーっ。声が大きいよ」


「あ…ごめん」


普通に言っただけなのだが、注意されて訳もわからないまま謝る。

すると、彼は辺りに視線を巡らせながら小声で言った。


「今ここに見たことのない顔、いる?」


「はっ?」


唐突な質問に、裕一郎はキョトンとする。

「だから、如月の知らない顔がこの教室にいるかって聞いてんの!!」

「知らない顔?」

聞かれて彼は啓太の肩越しに、教室を一周見回した。

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