「ちょっと待て」
「!!」
裕一郎の体が一瞬、らしくないほど硬直する。
様子が変だ。
「?」
と、何かを握り締めている、その手に気づく。
「お前、手に何を持ってるんだ?」
「別に…何でもないよ。手を離してくれないと、学校に行けないんだけど」
「そんな時だけ都合よく学校を持ち出すな。まだ時間はある。右手、見せてみろ」
どうも昨夜の事だけが少年の態度を変えている原因とは思えなくて、河村は掴んだ手に力を込めた。
すると、逆に裕一郎は拳を硬く握りしめる。
「見せろと言っている」
「嫌だ…命令する権利、久司にあるの?」
「何…?」
「オレは何もかも久司に話さなきゃいけない訳?自分は何も話してくれないし、隠し事ばかりするくせに!!誰だって言いたくない事の1つや2つ、あるんだよっ」
裕一郎は河村の手を振りほどくと、そのまま事務所を飛び出した。
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