「双瀬さん、久し振りですね」


ここしばらく姿を見せなかった顔なじみに、裕一郎は上着を脱ぎながら尋ねる。

「だな。ちょっと家がゴタゴタしてたもんで、なかなか顔出せなくてさ」

「ゴタゴタ?あ…もしかして、おばさんにお見合い写真山積みにされて、誰か1人でも選ばないと外出させて貰えなかったとか」

冗談で言ったつもりだったのだが、

「…裕一郎、お前がなぜ大河内家の内情を知ってるんだ?」

反対に真顔で聞き返された。


(図星……)


裕一郎は苦笑する。


「で、今日はどうしたんですか?自由の身になったのに、わざわざ久司の嫌味攻撃を受けにきたとは思えませんけど」

「そうなんだ、実は依頼というか相談に来たんだよ」

双瀬はポンと両手を叩くと、ポケットからメモを取り出した。

.