「人には得意不得意分野ってもんがあるんだ…」

ボソボソとつぶやくような答えを聞いて、河村は口端をあげて薄らと笑みを浮かべる。

「ふーん。じゃあ、お前の得意分野って何なんだ?」

「おれの…得意分野は…あー、何だ…そのぉ…つまり…」

「つまり?」

日頃の鬱憤を晴らそうとするかのように、河村は容赦なく双瀬をからかっていた。



するとそこへ、



「久司、いい加減その辺りでやめたら?」



いつからやり取りを見ていたのか、カバンを持った裕一郎が入口の所に立っていた。

彼の姿を見て戦意喪失したのか、


「何だよ…いいところだったのに…」


小さく鼻を鳴らすと、河村は拗ねた様子で2人にイスごと背を向けた。

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