ヒタヒタヒタ…。
後をつけてくるのが気配で分かる。
《私が見えてるんでしょ…声が聞こえてるんでしょ…無視しなくていいじゃない? 》
ふわり…
風のように2人の前に回り込むと、薄ら笑いを浮かべながら霊は試すように呟く。
だが、彼はどんなに顔を覗きこまれ、話しかけられても無視を決め込んでいた。
むやみやたら霊と《関わり》を持ってはいけない。
それはこういう世界に身を置く者たちの間では、暗黙のルールだからだ。
「久司…」
不安げな少年の声。
「今は何も言うな。帰るぞ」
とてつもなく嫌な空気に、裕一郎は黙って従うしかなかった。
しばらく歩くと、彼は突然振り返り、アスファルトに指で文字を書く。
「道を逸れるものは、輪廻に戻ること叶わず…ここが境界線だ。霊道へ戻れ」
今度ははっきりと女の目を見て、彼は命令した。
《嫌よ。やっぱり見えてるんじゃない…あなたって意地悪ね》
「勘違いするな。あれはお前が思っている《黄泉人戻りの道》なんかじゃない」
(よみびと…もどり?)
河村の背中に庇われるように立っている裕一郎は、聞き慣れないその言葉を心の中で繰り返した。
河村はなぜこの霊がついてきたのか、理由を知っているようだ。
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