そう決意を新たにしたところで、彼は自分が目的の場所に来ている事に気づいた。
「あ……久司―っ、行き過ぎだよ!!」
「裕…お前、そんな事は早く言えよ」
引き返してきた河村は、軽く息を切らしている。
「オレのせい?久司が勝手にどんどん歩いて行ったんじゃないか…それにしても、たかがこれくらいの距離を走っただけで息を切らすのも考えものだよ。事務所で昼寝してる時間があったら、ジョギングくらいした方がいいんじゃない?足腰が弱くなると、早く衰えるよ」
「う…うるさい。雑務で疲れてんだ、昼寝くらいさせろ…って何でお前そんな事知ってんだ」
「たまに学校が早く終わって帰ったら、そんな姿によく遭遇するから」
裕一郎はしれっと答えた。
「裕……お前、学校にはちゃんと行ってるんだろうな…」
そうそういつも学校の授業が早く終わってたまるかと、河村は疑いの眼差しを少年に向ける。
子供の頃から出校するフリをして、実際には行ってなかったという過去が多々ある裕一郎である。
「心配しなくても行ってるよ…あ、そろそろ時間になるんじゃない?」
何だか上手く誤魔化された気がしながらも、河村は暮れかかる空を見上げる。
時が満ちてきていた。
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