Darkness † Marker 4   【大禍時】

「夕暮れの薄暗くなりかけた時分の事を指す言葉なんだが、昔からあの世とこの世が僅かだけ繋がる時間帯だと言われている。一般的には魔に逢うという事から《逢魔が時》と表記されるが、本当は大きな禍が起こる《大禍時》と書くのが正しいな」


「…どうして夕方なんだろ」


霊にとっては夜の方が闇に紛れていいのでは、と密かに思う。

「さぁ。あやふやな感じだからじゃないか?夕方なのか、夜なのかはっきりしない…あの世なのか、この世なのかの区別がつけにくく人目にもはっきり映らないから…」

「うーん、答え自体があやふやで分かりづらいよ」

裕一郎は苦笑した。

「霊の世界に行くには通り道がある。俺たちが普段こうして通っている道と同じようなものだ。それは《霊道》と呼ばれ、死んだ人間の魂がそこを通って霊界へ帰っていくために使われる。道はいくつもあるが全てが完全に繋がっているわけではなく、所々が切れた状態になっている。その切れた道と道が繋がる瞬間が、大禍時と呼ばれる時間帯なんだよ」


「オレでも見える?」


「意識すれば、誰でも見えるさ。ただその道がどこにあり、どこに繋がっているか知らないから分からないだけだ。まぁ普通の人間でも、時々は道が繋がった瞬間に居合わせて幽霊を見る、なんてことはあるらしいけどな」


(なるほど…)


そう言われてみれば、有り得ない話ではない。

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