Darkness † Marker 4   【大禍時】

「どの辺りに居たんだ?」


「僕が教室に入って来たら、今いるこの場所にその幽霊がぼんやり立ってたんだ。変だなとは思ったんだけど、誰も何も言わないから知らないフリして自分の席についたんだよ。でもやっぱり気になるだろ?だからそっと振り返って見たんだ。そしたらそいつはゆらゆら歩きだして教室内を斜めに横切り、教壇の左側に立ち止まったまま動かなくなった…そこへ如月、お前が登校してきたって訳だ。…な?こんなにはっきり見えてて、見間違いはないだろ!?」


信じてくれよと、啓太は裕一郎にすがりつく。



「………」



その手をゆっくりとほどいた彼は、教壇に向かうと最後に霊が目撃された場所に立った。

「おい、如月…」

ビクビクしながら、啓太も後をついて行く。


「悪い。ちょっと離れててくれる?」


彼に背を向けたまま言い放つと、裕一郎は辺りを見回した。

確かにここに立つと、空気に混じり他とは違う《残留思念》のようなものを感じる。

そっと右手で目の前にある、作りつけの本棚に触れてみた。



(?…何だろ、この感じ)



暗い歪みのようなものが薄らと見える。

それは奇妙な空間としか言い表せなかった。

今までこんなものを、教室にいて感じた事はない。


となれば、新しく出来たものだと思われるが…。
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