少しずつ春めいてきた陽気に、河村は窓辺の席でまどろんでいた。


裕一郎は学校に行っていて、今は彼1人が事務所にいる。

客もなければ電話も鳴らない…平和な水曜日の午前だった。


他に社員がいる訳でなく、当然、居眠りをしても咎める者などいない。

ここ数日は仕事や河村個人の野暮用でバタバタしていたから、たまにはこんな時間を過ごすのもありだろう…そう思って、のんびりしていた。

先月は過去にないほど記録的な大雨が降り、この地域でも地盤が緩んで土砂が流れるなどちょっとした騒ぎもあったが、今はそんな事を感じないほどいい天候に恵まれた日が続いている。

桜のつぼみが綻び始めたら、酒とつまみを持って花見をするのも悪くないなどと考えていた所、突如静寂は破られた――。

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