よく見ると、女の子は金髪だけど髪型が私に似た腰まであるロングヘアだし、目も私みたいな猫目だ。
「確かに似てるー!蝶羽がモデルになってたりして〜」
亜希乃が茶化した。
「いや、それは無いでしょ〜」
私の知り合いに絵描きはいないから、ただ偶然似ただけだ。
「でもこれが描かれたの、割と最近みたいだよ?これだけ特別、時代が違うみたい」
え〜?
でも、プレートに書かれた作者名は知らない人だし、この絵が描かれたのは十年前だ。
やっぱりたまたまだ。
「蝶羽ちゃん、ちょっと」
亜希乃と阿弓の隙をついて、颯馬さんが突然私に内緒話をもちかけた。
なんか、真剣な顔……?
「何ですか?」
「ちょいと失礼」
服に香水のようなものを吹きかけられた。
ワンピースが少し湿る。
「?」
「ごめんね、ちょっとおまじない」
なんだろう、これ?
教えてもらおうと思ったけど、颯馬さんはもう亜希乃達の元へ行ってしまった。
既にヘラヘラした笑顔に戻ってる。
何だったんだろう?
「蝶羽ちゃん」
と、音遠くんが戻って来た。
「音遠くん!お話はもう良いの?」
「うん、楽しめたよ。瀬川さんも館長さんも、面白い人だった」
「それは良かった……けど、あの、音遠くん?」
話しながら、音遠くんがグイグイと距離を詰めてくる。
もう吐息がかかるくらいの距離だ。
光の加減で、彼の瞳が緑色に光る。
「ああああの、音遠くん?!」
やっぱり、人形みたいに綺麗な顔……だけど、少し眉間にシワがよってる。
「颯馬さんと何話してたの?」
え、何、怒ってるの?
「いや、何も?」
正確には、一方的に何かを吹きかけられただけ。
私自身は何も怪しい事はしてない。