「うそ……」
それは、よく見慣れた男性だった。
右目の包帯。
顔が隠れるほど長く艶っぽい黒髪。
やけに整った顔。
見間違えるはずもない。
幕末喫茶で1番多くの女性を相手にしている随一のイケメンは、
あの無口無表情の一ノ瀬先輩だった。
「なに?好みだった?」
有紀に声をかけられる。
「あ…うん……」
そうは答えたものの、
全然状況が理解できない。
そこにいた一ノ瀬先輩は、いつもと変わらない無表情だったけれど、時折お客さんに笑って見せていた。
そして、綺麗な艶のある黒髪と端正な顔がとても着物と似合っている。
でも、なんで一ノ瀬先輩が…?
影でこっそりバイトしている子もいるけれど、基本うちの学校はバイトを禁止している。
しかも、あの一ノ瀬先輩が接客業なんて……。
それも、あの純粋な一ノ瀬先輩が女性相手に接客をする喫茶店に…。
あの一ノ瀬先輩が、
女性客に囲まれて……。
信じられない。
どうなっているの…!?


