琉生君との距離がまた近づいたあの日からひと月近く経ち、

暑い日が続くけれど、
すみれ荘の面々は相変わらずだった。

そんなある日の昼下がり。


「海行きてぇ…」


悠希がエアコンのよく当たるソファに座りそう呟いた。


「先輩受験生じゃないですか」


高城君も悠希の隣に座り言う。


「それなりの大学でときゃーいいんだよ。どーせ、親父の跡継いで理事長になんだからよ」


「うっわ…サイテー」


「うっせ」


そんな会話を横目に私は読書を続けた。


鈴屋君、雨宮先輩、琉生君、架神君は、夏休みという事もあって実家に帰省していた。


帰る場所がある。

それがとても羨ましかった。

私の帰る場所は、ここ、すみれ荘しかない。
それがけして嫌なわけじゃない。


メンバーはみんな個性があって大好きだし、暖かいし。

でも、やっぱり"家族"という存在が羨ましかったりする。