すみれ荘までの道を2人で歩いていると、頭上から、ポツポツと雨が降り始めた。
「あ、雨……」
私達は傘は持ってきていない。
「通り雨か…」
琉生君は私に手を差し出してくる。
「ん、雨宿りできるとこまで、走ろう」
その言葉に私は小さく頷いて、自分の手を重ねた。
暖かい琉生君の体温が伝わってくる。
雨宿りをしてからすぐに、
雨は上がった。
それでも私達は、
手を離さなかった。
ゆっくりすみれ荘への道を、
手を繋いだままで歩いた。
大きな手から伝わってくる熱に、
私はドキドキしたまま歩みを進めた。
「恋人…か……」
隣で琉生君がポツリと呟く。
「え?なんて?」
「いや、なんでもねぇ」
その声と同士に、繋いだ手が、ギュッと握り返させる。
また、ごまかされてしまった。
でも、向けられ笑顔は、あの時と同じ笑で、私は何も言い返すことができなかった。


