「素敵ですね」
「私の夢は琉生の夢で、琉生の夢も、私の夢なのよ」
そう笑うおばあさんは、夢に生きていて、本当に輝いていた。
「でも、驚いたわ。可愛い恋人ができたなんて」
「琉生君、学校でも人気者ですし…琉生君の彼女なんて、羨ましいですよ」
私の言葉に、おばあさんは目を丸くした。
「やだ、なに言ってるの?琉生の恋人はあなたじゃない」
「えっ?」
その時、ガラガラと音を立ててドアが開いた。
琉生君が帰ってきた。
それから、他愛もない世間話を3人でして、その日は早いうちにお開きとなった。
「琉生、すみれさん、また来てね」
おばあさんは帰り際そう言って手を振ってくれた。
「はい、また来ます」
私は軽くお辞儀をした。
「じゃあ、身体に気をつけて」
琉生君も手を振る。
「ありがとう。お幸せにね」
ドアをくぐった時、そんな言葉が聞こえた。
聞きまちがえかと思って、そのまま病室をでると、琉生君に話しかけられた。
「俺がいない時、なんか変なこと言われたか?」
「えっ…?そう言えば、琉生に恋人がどうこうって…」
「そうか…なんか勘違いされてっぽいな」
「そうなの?」
意味が分からず聞き返したけれど、琉生君は笑ってごまかすだけで、答えてはくれなかった。