コンクールからしばらくたったある日の後日談である。


私は、琉生君と2人でおばあさんのお見舞いにきていた。


容態が急変したというあの日、
奇跡的に一命を取り留めたらしい。
本当によかった。

そして、家族がいるからと、
今は九州ではなくこちらの病院に入院しているという。


病室に入ると、おばあさんはベッドから上半身を起こし窓の外を眺めていた。


「ばあちゃん」


琉生君がおばあさんの背中に声をかけると、おばあさんはゆっくりと振り返った。


「あら、琉生。来てくれたのね」


琉生君のおばあさんは、年齢とは似つかわしくないほどに綺麗で、上品に口を開いた。


「あぁ、大丈夫なの?」


「うん、お陰様でね。あら?そちらの方は?」


ドアの前につったっていた私に気づいたらしく、声をかけてくれた。


「あぁ、俺の……と、友達」


琉生君はそう言って、私に手招きした。
私はベッドの前まで歩く。


「佐伯すみれと言います」


自己紹介すると、おばあさんは満足そうな笑で深く頷いた。


「そう、すみれさん。琉生はわがままで何かと大変でしょう?」


「えっ?あ、いや…。そんなこと…」


予想もしていなかったことを聞かれたので、私は咄嗟に答える。


「別に、そんなんじゃねーから」


琉生君が微かに頬を赤らめて言った。
どういうことだろう…?