「ありがとう…。すみれ…」
ボソりと耳元で呟かれたその言葉に、
周りの声も聞こえなくなるほどに、
心臓が飛び跳ねた。
「おめでとう…。琉生君…」
私も返すように小さく呟くと、
南條君、改め琉生君の背中に手を回した。
私を抱きしめる力が更に強くなる。
不思議な気持ちだった。
彼氏でもない人とこうして抱き合うなんて…。
それから、高城君と悠希が無理矢理私達の間に入った。
紅潮する顔をあげて周りを見ると、
ショックそうな顔を浮かべる女の子達と、
顔を真っ赤にする一ノ瀬先輩、
腹を抱えて笑う架神君、
苦笑する雨宮先輩と鈴屋君が見えた。
怒る高城君と悠希に、
琉生君は、冗談めかして、
「外国式挨拶だ」
と言った。
高城君と悠希は、それでもなお怒りを収めることなく、琉生君に詰め寄っていた。
琉生君は勝ち誇った笑で2人の抗議を聞き流していた。


