ルームシェア~7人の王子様~



「南條君のおばあちゃんも、きっと、そんなの望んでな─────」


「俺のばあちゃんは、このコンクールでプロのピアニストなのに金賞を取れなくて、名誉に傷をつけた。
金賞をとったやつに一気に全てを持っていかれた。……怖かったんだ。俺も。
だから、よかったんだ…これで」


南條君は、半ば自分に言い聞かせるように言った。

名誉に傷をつけた…。


怖い?南條君が?
違う。南條君は、出たいはずだ…。

私には分かる。
誰よりも、誰よりも努力したのだから。


「ほんとに…そう思ってるの…」


「思ってるよ」


私が絞り出した声に即答する。
嘘だ。嘘だ嘘だ。


「お前には、分からないと思うよ。じゃあな」


南條君は私に次の言葉を選ばせる前に、
私の頭を大きな綺麗な手でぽんぽんと叩いてから、部屋を出ていってしまった。


薄暗い部屋に1人残された私。

私は、閉ざされた扉をしばらく見つめていた。